小説

2007年3月26日 (月)

短編小説 復讐サイト”殺し屋”最終回

 ネットで調べた噂によると、「殺し屋」に殺人を依頼すると、事故死で相手が死ぬことが多いという。それは事故死を装って殺したのだという噂と、単なる偶然で「殺し屋」のサイトは詐欺なのだという噂があった。桂子は、今回の大輔の死は偶然で片付けたかった。殺人を依頼して、実際に大輔は殺されてしまった・・・。そう考えると夜も眠れず、桂子は罪悪感に押しつぶされそうになっていた。何も殺すことはなかったのでは?、そう思うと堪らなく怖くなった。

 「大輔、あんたが悪いのよ。私の気持ちを踏みにじるから・・・。」

 そうはいっても、大輔が死んだということに変わりはない。そして殺人を依頼したという事実は消えない。桂子は後悔していた。

 もう一度「殺し屋」と検索してみた。しかし、今度はサイトは見つからなかった。多分私が殺人を依頼したことは、バレることはないだろうと桂子は思った。サイト自体が偶然でしか見つからないサイトだし、サイトの方も殺人を行ったことがばれたらまずいわけだから、証拠は残してないだろうと思った。しかし、胸の中の罪悪感までは消えなかった。

 桂子は極力今回のことは忘れることにした。そして偶然だったと自分に言い聞かせた。そうでないと罪悪感と後悔で、自分がだめになってしまうと考えたからだ。

 桂子は何事も無かったかのように、今日も仕事を続けている。

 「殺し屋」の噂は、今もネットで絶えない。そして殺人を依頼しようとサイトを探す人も、いなくなることはないだろう・・・。                                    完

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2007年3月21日 (水)

短編小説 復讐サイト”殺し屋”その5

 振込みをしてから一週間が過ぎた。その間、何の音沙汰もなく、やはり詐欺だったかと桂子は後悔しはじめていた。ドブに捨てる覚悟だったとはいえ、30万は大金である。貯金をわざわざ下ろすんじゃなかった・・・。桂子は泣きたい気持ちだった。男に振られたうえ、お金まで無くしたのである。誰かに八つ当たりをしたいというよりは、心底ガックリきて、そんな気にもならなかった。桂子は暗い気持ちで時を過ごした。

 しかし、それからさらに一週間が過ぎた頃、何と、メールが届いた。「依頼完了。伊藤家、明日葬儀」というメールであった。桂子は驚いた。詐欺ではなかったのか・・・?。しかし本当に葬儀は行われるのだろうか。だいたいどういう方法で殺したのだろうか。またも疑問は尽きない。とりあえず大輔の家に行って確認してみるしかない。明日葬儀なら、今夜が通夜になるだろう。桂子は大輔の家に行ってみることにした。

 はたして通夜は行われていた。多くの人が訪れている。大輔は本当に死んだのだ。一体死因は何なのだろう。本当に殺されたのか・・・?。話し声が聞こえた。

 「可哀想に、ひき逃げでしょう」「犯人はまだ捕まってないんですって・・・」

 ひき逃げ・・・!。確かに依頼は行われたのだ。「殺し屋」はぼったくりの詐欺サイトではなかった。噂は本当だったのだ。人一人殺すのに30万円ですんだのは、変な話だが、良心的な価格といえるのかもしれない。何だか桂子は恐ろしくなってきた。自分の依頼で大輔は殺されたのだ。もしこのことが警察に知れたら・・・。桂子は足早にその場を立ち去った。一刻も早く離れたかったのだ。桂子は不安になっていた。 つづく

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2007年3月 9日 (金)

短編小説 復讐サイト”殺し屋”その4

 「復讐」、「殺人」で検索できるサイトは限られてきた。それを一つ一つチェックするのもだんだんと疲れてきたのだ。ふと桂子は、「殺し屋」と検索してみようかと思いたった。だめでもともと、である。すると、なんとあっさり「殺し屋」というサイトが検索できてしまった。桂子は拍子抜けした。こんな簡単に見つかるとは・・・、と桂子は思った。しかし、これは本当に探していた「殺し屋」のサイトなんだろうか。だいいち、これでは噂とちがうではないか。検索しても見つからないのではなかったのか。次々と疑問が湧いてきた。でも、とりあえずアクセスすることにしてみた。

 それはとても簡素な画面だった。「殺し屋」というサイト名と、ENTERという文字だけが白い画面に黒字で浮かびあがっている。ENTERをクリック。すると、「殺したい相手の名前と住所を記入して下さい」という文と四角い囲みがでてきた。少し面食らいながら大輔のフルネームと、住所を打ち込んだ。また画面が変わり、「この口座に30万円振り込み確認しだい依頼を実行します」と口座番号がでていた。「振込みのとき殺したい相手の名前を記入することを忘れないで下さい」の文のあとには「依頼完了のメールを送りますのでメールアドレスをどうぞ」とあった。30万・・・、出せない金額ではない、と桂子は考えていた。しかし人一人殺すにしては安い金額である。それに、このサイトが本当に「殺し屋」のサイトなのかわからない。誰かが詐欺のために作ったサイトかもしれず、万一本当のサイトだとしても、同じ不安はつきまとうのだ。桂子は迷っていた。噂を信じて、振り込むべきか、躊躇していた。30万捨てる覚悟で振り込むか、決断のときだった。 つづく

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月 8日 (木)

短編小説 復讐サイト”殺し屋”その3

 「君の好きにしたらいいよ」

それが、二股がわかったときの大輔の言葉だった。桂子は驚いてそれを聞いた。自分が当事者なのに、何なの、この第三者的言い方は?。桂子ははらわたが煮えくり返った。しかも、原因は大輔の方にあるのに。

 「もう別れる!」

桂子が憤ってそう言うと、大輔は

 「君が選んだことだから」

とだけ言った。私はこの男にとって、いったいなんだったのだろう。そんな言葉で済ませてしまうほどの存在だったのか・・・。桂子は思った。逆ギレしてくるほうがまだマシだった。二股がばれても隠そうともしないばかりか、この態度・・・。自分が惨めだった。と同時に自分という存在を踏みにじったこの態度に、心底腹が立った。その頃から、大輔に対して殺意めいたものが芽生えはじめたのかもしれない。桂子はこんなふざけた態度の大輔が許せなかったのだ。どうしても復讐しなくては気がすまなかった。

 桂子は、会社から帰ってくると、必ずパソコンに向かうのが日課になった。そして「殺し屋」のリンクが貼られてそうなサイトを検索した。しかし、なかなか「殺し屋」のリンクは見つからなかったのである。土日もどこにも出かけずパソコンで検索をして、一日中パソコンの前にいる週末が続いた。そういった状態で一ヶ月が過ぎていった。桂子はだんだんと疲労がたまっていくのを感じていた。目の下に隈も出来ていたのである。 つづく

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月 6日 (火)

短編小説 復讐サイト”殺し屋”その2

  以前、殺人を請け負うサイトにお金を振り込んで殺人を依頼したが、殺人は行われないしお金も返ってこないと警察に相談して、自分が警察に捕まるという間抜けな事件があった。桂子は最初、「殺し屋」というサイトも、その手の詐欺まがいのぼったくりサイトだと思っていた。しかし、女性に暴行しようとして捕まった犯人が、ネットで復讐を請け負うサイトをやっていて、その暴行も請け負った復讐の一つだったという事件もあった。もしかしたら「殺し屋」のサイトも本当に殺人を請け負うサイトかもしれない。桂子はそう思い、「殺し屋」のサイトを探してみることにしたのである。

 だが、どのように探したら見つかるのか、皆目見当がつかなかった。検索しても見つからず、他のサイトにリンクが貼られているのを偶然見つけるしかないと言う噂だからだ。とりあえず「殺人」や「復讐」などの言葉で検索してみることにした。「殺人」で1700万、「復讐」で500万もヒットした。そこで出てきたサイトを片っ端から探していったのである。しかし、それらのサイトを見ていると、何だか気分が悪くなることも確かだ。そうしたサイトから負のパワーが出ているように、桂子は感じた。それに思ったより、復讐代行とかのサイトが多いのにも驚いたのである。桂子は、何も殺すまでいかなくても、復讐程度でいいか、と思えてきた。しかし、復讐サイトも詐欺まがいのぼったくりサイトかもしれない。同じ騙されるなら、復讐も殺人も同じか、と桂子は思った。

 桂子にとって、大輔は初めての男だった。桂子はこの年まで男性に縁がなかったのだ。そのことがより大輔への憎しみを深くさせたのかもしれない。 つづく

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月 4日 (日)

短編小説 復讐サイト”殺し屋”その1

  インターネットに「殺し屋」という名のサイトが存在するという。なんでもその名前のサイト、実際に殺人を請け負ってくれるのだそうだ。しかし、「殺し屋」と検索してもそのサイトは見つからない。他のサイトに偶然リンクが貼られているのを見つけるしか、アクセスする方法がないと言われている。肝心の殺人を請け負う料金は、一人につき百万円だとも、一億円だとも言われ、はっきりしていない。そして、どのように殺人を行うのかもわかっていないのだ。あくまでも噂に過ぎない幻のサイトである。本当に殺人を請け負ってくれるサイトだとの噂もあるが、金だけ取るぼったくりサイトだとの噂もあり、噂の信憑性は薄い。なかには実際に殺人を依頼して、憎い相手を殺してもらったという書き込みが某掲示板にあったというが、事の真偽は定かではない。

 山下桂子、28歳。OL。桂子は、たまたまネットの掲示板を見て、この「殺し屋」の噂を知った。そしてこのサイトの噂を検索していくうちに、実際にあるんじゃないかと探すようになった。なぜなら、桂子には殺したいほど憎い相手がいたのである。その相手を殺してくれるなら、ある程度の金額を出してもいいと思っていた。その相手とは、三ヶ月前まで付き合っていた彼氏の伊藤大輔だ。なぜ桂子は大輔を殺したいと思ったか。簡単に言えば桂子は大輔に騙されていたからである。大輔には、桂子の他にもう一人女がいて、二股をかけられていたのだ。しかも、そのもう一人の女の方が本命で、桂子の方が遊びだったのである。よくある話だ。だから、正確には彼氏とは言えないのかもしれない。でも、桂子は本当に大輔を愛していた。しかし裏切られたのである。愛はいつしか憎しみに変わっていった。 つづく

| | コメント (0) | トラックバック (0)